(テキスト:萩沢写真館 / 写真:篠有里)
「先輩、それじゃあまた振られますよ?」
正彦が、マクドナルド中谷店2階の防犯カメラからちょうど死角になっているテーブルで、制服姿でタバコに火をつけながら言った。
「いいですか、先輩?女子と付き合うのには手順ってもんがあるんです。」
正彦は、すうっと煙を吸うと、タバコの灰を飲み終わった自分のメロンソーダMのカップの中に落とす。それから制服に落ちた灰を払った。
「そうかねぇ」
そう言いながら俺はわざとタバコの煙にむせたような顔をして、数回、大きめの咳をしてやった。
「そんな話しもしたこともない人にいきなり「付き合ってくれ」なんて言われたって、先輩のこと、相手もよく知らないんだから「はい、お願いします」なんて言ってくれる訳ないじゃないですか?」
「そういうもんかねぇ」
お前だって女の子と付き合ったことねえじゃねえか。そんな奴のアドバイスに信憑性があるかってーの。
「最初は挨拶からです。それから二三言雑談。そしてまずは友達になる。そのぐらいの手順を踏まなきゃ彼女になんてなってくれませんよ?」
「そういうもんかねぇ」
俺は飲み終えたペプシコーラの氷が融けてできた「コーラ風味の水」をズズズとすすった。いったいどの雑誌で読んだんだ、そんなの?
「だ、か、ら、ですよ!」「先輩の好きなジュンコ先輩と、あと俺の好きなトモヨ先輩の4人で、ダブルデートっすよ!これなら気まずい雰囲気になることもないし、二人っきりじゃないからギリッギリ「お付き合い」にはならないんす!」
「そういうもんかねぇ」
俺はあいかわらず腑抜けた返事を繰り返したが、結局単にてめえがトモヨちゃんとお近づきになりてえだけなんじゃねえの?なんて考えていた。