Symptom 20181024(№107)(お萩)

(写真:萩沢写真館

 

 

U字型枕に押しつけた顔に、敷かれたペーパータオルがひっついている感じがする。
風邪気味のせいか鼻水が延々とあふれてきて、うつぶせの姿勢はつらい。
あれ?この格好ってうつぶせだっけ?あおむけだっけ?時々違いがわからなくなる。
いつもは肘を曲げて腕を寝台の上にのせているが、この頃は肩が上がらなくてだらりと床に向かって腕を垂らしている。
ジャージのフロントジッパーが痛い。この頃、大したことない痛みに敏感になっている。ちょっと疲れているのかもしれない。
まいったな、鼻水が止まらない。ペーパータオルは顔にひっついたままだった。
つぶった目の裏には延々と曼荼羅のイメージが繰り返される。

カーテンの向こうで他の患者と整体師が小声で話している。患者の自分自身の体調に関する重大な告白が行われているようだが、何を言っているのかまではわからない、まあ別に知りたくもないが。
うわんうわんうわんという低周波治療器の音。これって本当に効くのかな。いつも思う。

ラジオからは単に耳障りがよいだけの言葉が羅列された、ただただ小気味よいこと以外に特徴のない軽薄な曲がかっている。そんな曲をかけるのは決まって佐藤竹善だし、かかっているのも大概そいつの曲だ。そうに決まってる。少ねえ語彙の中身がからっぽな恋愛歌が、まるでこの世が終わるまで続くんじゃないかと思えるほど延々と流れ続け、大して面白くもねえ仲間同士の内輪のエピソード(そんなもんラジオで流すなよ)を、竹善はべらべらべらべらと得意気に喋り続ける。「長年音楽やっててー」、「シンガーソングライターっていうのは-」‥「は~い、トークしてるパーソナリティが通りますよ~」地獄のミサワかっつーの。誰が興味あんだよ、そんな話?

中古車屋のCMと「カードローンの過払い金請求、まだ間に合います」が流れる。時報の前はいつもそうだ。

一昔前のファミレスでウエイトレスを呼ぶベルのような音がしてハッとする。背中をポンポンたたかれる。「じゃあほぐしていきますね~」あれ?俺は今、眠っていたのか?

千崎先生は今日も棘上筋を責める。