(再々)Symptom 20170220(№76)(お萩)

(写真:萩沢写真館

 

新しくできた幹線道路のおかげで、このごろは駅のまわりもすっかりさびしくなってしまいました。もう、昔を思い出させるものは新幹線の高架橋ぐらい。これだけはあいかわらず、ゴーっという音をたてて新幹線が通過します。君の部屋で居眠りをしながら聞いた、このゴーっという音を、今でもときどき真夜中にふと、聞いたような気がして目を覚まします。僕の町はこんな風です。
 

 君の町はどうですか。
 

駅へ続く街路樹はだいぶ葉が落ちて、歩道を歩くとシャクシャクと枯葉の割れる音がします。ときおり吹く強い風で街路樹はだんだん裸になり、心細そうに道を隔てた反対側の木々とお見合いしています。そろそろ雪が降るかもしれません。山の上の方はもう、少しずつ白くなってきています。雪が降ると、冷たくなった手をつないで、白い息を吐いて、月明かりにぼうっと輝く新雪のうえを2人でころばないようにかけあしで、おでんを買いに行ったことを思い出します。僕の町はこんな風です。
 

 君の町はどうですか。
 

時々、川に行きます。あの川にも大きな橋がかかって、あの頃とはすっかり交通の流れがかわってしまいました。ぽつりぽつりと、たよりない明かりを照らしている街頭だけを目印に帰った田んぼ道も、今ではガソリンスタンドとコンビニと、行きかう車のヘッドライトがまぶしい4車線のりっぱな道路になりました。マンションやスーパーマーケットが立ち並び、橋の上をあわただしく車が通り過ぎています。ただ川はのん気なもので、そんなことはおかまいなしにあいかわらずのんびりと流れています。僕の町はこんな風です。
 

 君の町はどうですか。
 

駅の近くのアルバイトをしていたコンビニエンスストアも、ひとつ向こうに新しい道路ができたのと、近くに他のコンビニができたのとで、先日ついに店を閉めました。もちろん君も僕もとっくの昔にアルバイトなんて辞めてはいるんだけど、いろいろなものがなくなり、いろいろなものが変わり、だんだん君を思い出すのも難しくなってきました。僕の町はこんな風です。
 

 君の町はどうですか。

 

 君の町はどうですか。