(再々)Symptom 20161025(№38)(お萩)

(写真:萩沢写真館

 


「「読書」って言うといつも一くくりにされるのよね。「本を読む」って言っても、それは実用書かもしれないし、小説かもしれない。ノンフィクションやエッセイの可能性だって十分あるわ。「実用書」だって『園芸入門』と『情操教育』じゃあ大違いだし。それなのに全部まとめて「読書」って一把一絡げに言われたんじゃ、読書家達もたまったもんじゃないわよね。」一息にそう言うと(「十把一絡げ」を「一把」と言い間違ってはいたが)、彼女はタバコを一口吸った。 
 

もし彼女の言うことに一理あるのだとすれば(現に僕はその時、ひどく感心したのを覚えている)、履歴書の趣味の欄に「水泳」と書くのは、水泳愛好家にとってはひどく屈辱的なことかもしれない。実際彼らは、「趣味:自由形」とか「趣味:背泳」と書きたいと思っているに違いないのだから。
 

眠りに落ちる直前、夢の一歩手前で彼女と話している僕は、僕はそんなことを考えていた。次に彼女に会う時、この比喩が彼女に気に入ってもらえるかどうか試してみよう、と思った。
 

だが次の朝、目が覚めて思い出した。彼女は3年前、すでにこの世を去っていたことを。