(再々)Symptom 20160927(№25)(お萩)

(写真:萩沢写真館

 

「『ツイスト・アンド・シャウト』の頃」


「Twist and Shout」がアルバム「Please Please Me」に録音された当時、彼らのマネージャーは(ブライアン・エプスタインだったか?)ジョンがライブでその曲を歌い、声を枯らさないように制止するのに必死だったいう話を何かで読んだ。



ハイテンション水泳※でその日の部活を締めくくり部室で学生服に着替えていると、小西は、丸い手鏡を器用に壁に立てかけて(その部屋には割れてたり曇ってたりでまともな鏡がなかった)タオルで乾かした髪をギャッツビーでなでつけていたのだが、今日もまたニヤニヤしながら俺の更衣室をのぞき込み、突然大声で「♪ウェル・シェィクイットアップ・ベイべーナーウ!!」と歌い出した。
 

タイムも成績も、気になる女子部員のことも、彼らの曲があれば(とりあえずは)どうでもよかった。「愛」の意味なんて誰一人わかっているはずがなかったけれども(「つまり結局はさ、君が得る愛は君が与える愛に等しい」なんて男子中学生に理解することは絶対に無理だろう)、狭くて、窓が一つもなくて、ツーンと塩素臭くて、床がつるつる滑って、蛍光灯が不健康な青白い光を放っている男子水泳部の部室で、更衣室の壁に貼り付けてある、単語にカタカナで読み仮名が振られた歌詞カードのコピーをなぞってド下手な英語で「ツイスト・アンド・シャウト」を怒鳴り散らせば、それでとりあえず全てはオーライだった。
 

※「ハイテンション水泳」とは

ハイテンションで25mを泳ぎ切る水泳のこと。「うぉーっ!」と叫んでプールに飛び込み、水面で思いっきり腹を打った後、息継ぎをする度に「でゃっ!でゃっ!」と声を出しながら泳ぎ、ゴールにタッチした後、拳を突き上げながら再度「うぉーっ!」と叫んで泳ぎ切った喜びを表現するというもの。泳法は各自得意なものでよい(背泳を除く)。