(再)Symptom 20171013(№93)(お萩)

(写真:萩沢写真館

 

 

(彼女の名は、仮に「ATGCさん」としておく。)

(1)

「こんにちは、先生。はじめまして。わたし高校時代、「ATGCさん」と3年間同じクラスだったんですよ。」

山沿いのまだ雪の残る職場を後にし、4月、市内の新しい職場に移った。赴任して3日目の晩に行われた歓迎会の席上、知人どころか顔見知りすらいないその職場で、その時文字通り初めて声をかけられ話をした女性の同僚から出たのがその言葉だった。彼女が同時に名乗った彼女(達)の出身高校は、確かに「ATGCさん」が進んだのと同じ女子高の名前だった。


その名は、はるか昔に忘れてしまったものだった。忘れてはいたけれど、よもや忘れることなんてできるわけがないほど深く、長い間心に刺さっていた名前だった。