(写真:萩沢写真館)
「まるで木星みたいだな。」
遠くの方で教師が何かを叫んでいるのを聞きながら、机の木目を眺めていたひよりは思った。
再履修の英語のクラスは、クラスが違うだけでなく学年もバラバラ、昼間部と夜間部の生徒たちもごちゃ混ぜになって授業を受けている。
それぞれの生徒がそれぞれの思いや悩みを抱え、しかしそれを互いに共有することなはい。
ひよりたちは、同じ惑星の軌道上を回る、しかし決してお互いにコミュニケーションを取ることのない衛星のよう
だった。
ひよりは孤独な多数の衛星のひとつになり、ぼんやりと木星の「目」を眺めた。