Symptom 20170308(№79)(お萩)

 

 

 大学2年の春、母が家を出て行った。それからというもの週に3度、父とスーパーマーケットに食材を買い出しに行くことが日課に加わった。スーパーのレジ袋を抱えて通るゲームコーナーのクレーンゲームは、陽気にポリスの「見つめていたい」を奏でていた。母は首をくくらなかっただけマシだったのだろう、そんなことを考えてみる。クレーンをぶら下げているウサギの目が、リズムに合わせて哀しく点灯していた。

 

 そもそもルールが分からないんだ。ゲームだけが延々と続いていく。どこへ行ったらいいのか。どこへ行かなければならないのか。どこへ行けるのか。どこへ行きたいのか。どこへ行かなければならなかったのか。

 

 「教えてくれよ。報いならもう十分だろう?」

 

 ウサギは何も話しちゃくれない。