(「書けといわれたから書いてみた」改め)symptom(第二夜)(お萩)

 

その絵描きはコッペパンの切れっぱしを食うために買っていたんじゃない。そいつはコッペパンの切れっぱしを使って、カンバスに描いた線を消していたんだ。もちろんバターなんてついてたら絵はただで済むわけがない。おかみさんの塗ったバターに気づかずにパンを使っちまったんだろう、絵は台無しだ(もっと早く気づけよ)。おかみさんは自分が望むような親切を貧乏な画家に施したんだけど、結局はそれがアダになって絵はダメになってしまった。

 

そんな話だった。いったいこの物語の何を、学校宇給食を与えられているガキ共の教訓にしたかったのかよく分からないが、とにかくバッドエンドのお話ってものに慣れてなかった小学生の俺はひどく驚いた。その話では桃から生まれた子が鬼を退治してはくれなかったし、灰を巻いたら桜が咲いてお殿様を喜ばせることもなかった。

 

呼吸に集中する。息を大きく吸い、できるだけ長く吐く。吸うことに集中し、吐くことに集中する。吸って、吐く。そうするうちは過去に打ちひしがれることもないし、未来におびえることもない。今現在、ここで呼吸をしている俺がいる。ただそれだけが事実だ。