ボトルのアイスコーヒーはおいしいけど、飲むと必ずゲボ吐きそうになる。
良彦は思った。
いや、ゲボを吐きそうになるのは彼を囲んでいた日常生活のせいだったかもしれない。
職場でのちょっとした勘違いを大げさに上司に報告され、別室で直接注意を受けた良彦は人間不信に陥っていた。
誰かが自分の細々としたミスを常に監視しているのではないか。
それが馬鹿げた考えであることは良彦も重々承知していたが、しかし今はどうにもその考えから抜け出すことができなかった。
どんなことで足を引っ張られるのか分からなくて、職場で誰かに声をかけるのにもちょっとした恐怖感を抱いたほどだった。
本人には聞こえないように、誰かが誰かの噂をこそこそと話している。
そんなことをするくらいなら、当人にその噂を伝えてあげたほうがいかにいいだろう。
良彦は思った。
IMEの調子が悪く、良彦は自分の名前を漢字変換するのにいちいち「義彦」の次の候補を選ばなければならなかった。